いつも焦っていた。いつだって、焦った気持ちがべたべたと身体に纏わり付いていたような気がする。
今日、山崎ナオコーラさんの新刊を少し読んだ。先にあとがきを読んでしまったのだけれど、おもしろかった。素直でふざけた感じ。彼女が小説家になる前からずっと、微炭酸ニッキを読んでいた。彼女の感性や感覚や文章がすきだった。ずっと、「小説家になるよ私。」というようなことを書いていて、ほんとうに実現させてしまって驚いたけれど、遅かれ早かれ、彼女はいつか『物書き』と言われる人になるんだろうなとわたしも思っていた。
閑話休題。わたしはよく、芯がないねと言われる。それは自分でもよくわかっている。わたし自身の中にはなにもない。
本を読んだ後、ふと、彼のことを考えた。もう恋人でなくなったあの人のこと。彼のなにがすきだったかといえば、その感性や感覚だった。固まった(悪く言えば頑固な)感性。個性的で、わたしが思ってもいなかったものの見方や考え方のできる人。わたしはいつだってそういう人に、憧れに近い感情を抱いてきたような気がする。彼は言葉を大切にする人だった。彼がいろんな言葉を発するたびに、恋心と同時に、彼の感性に、憧れのような感情を抱いた。
実はあれから一度だけメールをした。他愛もない言葉が返ってきたけれど、ひともじひともじが彼の息遣いそのものだった。
すきだと思った。失っても、やっぱり彼のことがすきだ。