記憶の欠片を書き留めたのでとても長いです。
20代さいごのクリスマスをわたしは一生忘れないと思う。
24日の夕方、頼まれていたケーキとチキンを買って彼の家に行った。それから一緒に飲み物の買出し。野菜も食べたいよねと言って、スティックサラダを作ることにした。セロリ、きゅうり、大根、にんじん。スパークリングワイン1本とビール(1L)を2本。帰りに、屋台(クリスマスシーズンになり現れた)に寄ったら、かわいい小銭入れが売ってたので、買おうかな…と呟いたら、買ってくれた。彼の分も買ったのでお揃いなの。

わたしが日本から持ってきてた『魔女の宅急便』を見ながら夕飯を食べた。彼の同居人たちがみんな帰省等でいなかったので、広いリビングのソファに座ってのんびりした。(いつもは彼の部屋でごはんを食べたりしてたのです。)わたしはこの映画を3ヶ月に1回くらいのペースで見てるので、好きなシーンの台詞は覚えてしまってて、何度か台詞を合わせて言ったらびっくりされた。そういうところがすきだよと言われて、少しはずかしかった。
食事後、ケーキの用意をしていたら、彼が「クリスマスプレゼント。」とリボンのかかったものをくれた。「わたしなにも用意してないのに。」と言ったら、「そんなこと気にしないで。ぼくが渡したかっただけだから。」と彼が答えた。包み紙を開けると、渋くてかわいい手帳が入っていた。「こういうの大好き。」とわたしが言うと、「骨董品屋で見つけて、自分用に買おうと思ったけれど、○○もすきだろうなと思ったからプレゼントしたいと思ったんだ。」と彼が言った。ありがとう、と心から思って、そう彼に告げた。

ケーキとワインを食べながらクリスマスソングを聞いた。しあわせすぎて、ずっと顔がにこにこしてた。トイレに行くと出て行った彼が、またリボンのかかったものを手に戻ってきた。「実はもうひとつあるんだよ。」と言いながら私の目の前にそれを置いた。包みを開けると、飛び出す絵本だった。「わたしなにも用意してないのに。」とまた同じことを言ったら、「このあいだの誕生日、ほんとうにうれしかったから。」と彼は言った。飛び出す絵本はRobert Sabudaしか知らなかったけれど、この絵本はスペイン語で書かれてあって、キッチュな感じがとてもよかった。

『600の黒い点』というタイトルなのだけど、そのタイトルどおり、各ページにいろんな形で黒い点が登場して、全部合計すると600個あるよという趣向。
彼のベッドで一緒に眠った。彼の身体にくっつきながら、またいろんな不安を話してしまった。それなのに、ちゃんとそれを受け止めて、わかりやすい形で答えてくれる。何度もそれを繰り返してるのに、面倒くさがらずに付き合ってくれる。こんなにやさしく全部受け止めてくれてたくさんすきだと言ってくれてたくさんキスしてくれるのに、なにを疑っているんだろうわたしは。と思って、話しながら涙が出てきた。「ごめんね。わたしはいつもひとりよがりな妄想に飲み込まれてしまう。」と言うと、「そう思わせてしまうぼくも悪い。」と言いながら髪を撫でてくれた。彼の腕に包まれたまま朝を迎えた。お昼頃、ようやく布団を抜けて、ふたりでピザを作って食べた。そのあとまたベッドで話をしたりくっついたりして過ごした。

19時頃、「帰ろうかな。」というわたしに、「一緒に夕飯食べようよ。」と彼が言うので、夜の街に出かけた。クリスマスだったからか、あそこにいこう。と決めたお店は閉まっていた。少し離れたbarを2軒はしごして、最後に蝋燭のあるbarでワインを飲んだ。「ねむいでしょ今?」「なんでわかるの?」「もう半年も一緒にいるから○○のことはだいたいわかるよ。」蝋燭が溶けゆくのを眺めながら話をした。甘く穏やかな時間だった。
知らない間に、外は雨になっていた。「雨が降ってるね。」と言うと、「もう一泊していくっていう手もあるよ。」と彼が言った。「そんなにずっといていやにならない?」とわたしが聞くと、「ぜんぜんいやじゃないよ。今日も一緒にいたい。」と彼が言うので、「わたしも同じ気持ち。」と言った。彼がそんなことを言うなんてはじめてのことで、少し驚いたけれど、とてもうれしかった。わたしが昨夜不安を話したからかもしれないし、もうふたりの日々が残り僅かだからかもしれないし、いろんな原因が考えられるけれど、ただただうれしく思った。
昨夜と同じように、彼のベッドで、彼の身体にくっついて眠った。髪から同じシャンプーの匂いがして、とてもしあわせな気持ちだった。

翌日もまたピザを作って食べた。