男ともだちから電話。1年半ぶりくらいの電話だった。声を聞いてすぐに彼だとわかった。まさか電話かかってくるなんて思わなかったけれど、心のどこかではいつかどこかで出会ったりするような気もしていた。
入籍したことを聞いた。旅行(1年間くらいアジアを放浪していた)の話を少し聞いた。表面的なことを少し話した。頭の動きが酷く鈍くなり、思考が停止しそうだった。
男ともだちが、親友男子と一時期仲の悪い時期があったのに、最近はふつうになっていることを他の友だちから聞いていたから、そのことについて質問した。
「どうやってRともとどおりになったの?あんなにお互いに軽蔑しあっていたのに。なにを切欠にもとにもどったの?」そう尋ねたら、
「…旅行かな。」そう彼が言った。
「一緒に旅行に行ったの?」
「いや、旅行に行く前に連絡したん。」
「それだけで?」
「うん、それだけやな。…男同士やからかな。」
男同士やからかな。その一言が胸に突き刺さる。わたしも彼と同じ性で出会いたかった。男女は結局、ひとりの人しか選べない。しあわせになるためにも倫理的な理由でも。心がばらばらに砕けそうだった。彼が入籍したことにではなく、わたしと彼は、同性ではなく異性で、それはもう変えることのできない事実であるということに。
最後の電話かもしれないのに、変なテンションで変な話しかできなかった。それだけがただ悔やまれる。